2016年活動報告  

5月6日:戦争のリアルと貧困のリアル 高遠菜穂子×雨宮処凛
場所:エル大阪(大阪)


戦争あかん!ロックアクションの主催による「戦争のリアルと貧困のリアル 高遠菜穂子×雨宮処凛」にブース参加しました。会場のエル大阪ホールは300名近い参加者でいっぱいになりました。



お話は大変刺激的なものでした。投稿者の責任で以下要旨を記載します。

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・高遠さんのお話し(要旨)

私は北海道千歳の出身。演習と隣り合わせで育った。戦争のリアルとは「殺す」ということ。
イラクでのもともとの日本のイメージは「ヒロシマ・ナガサキ、奇跡の高度成長」であった。しかしそれはくずれた。
「自衛隊」をイラク人に説明出来ない。要するに軍隊。セルフディフェンスフォース、と言っても戦争はいつも「防衛」の名のもとにおこなわれるので、同じこと。「後方支援」と日本では言っても世界では「兵站」ロジスティックス。


            高遠菜緒子さん

ISは「イラク戦争の落とし子」である。ISは極めて残虐。同時に有志連合の「テロとの闘い」での殺人も残虐。
ISでもシリアとイラクでは事情が違う。イラクのISについて話したい。

2005.5 イラクで「民主的」選挙にむけ、移行政府ができた。この時、イスラム教スンニ派のハサン師が連行され、3日後に無残な死体で発見された。内臓は抜き取られ頭にはドリルの穴があった。イラク政府の治安機関によるスンニ派狩りの始まりである。このイラク政府によるスンニ派狩りに対する深い憎悪が、ISがイラクで勢力を伸ばす原因になった。

2014.6 モスルがISに制圧された。ISのメンバーにはイラク政府の拷問被害者の遺族や生き残りが多かった。ISは「イラク政府の恐怖政治から解放するために来ました」とモスル市民に訴えた。モスル市民は喜び、モスルは無血でISの支配下に入った。1ヶ月だけモスルに自由があった。しかしその後ISの恐怖政治が始まった。女性は教師、医師以外の職業は禁じられた。弁護士は「神ではなく人間の法に仕える者」として、無条件に処刑された。生きるためには、職業を隠すしかなかった。

イラクでは2013年から政府に反対する非武装の「金曜デモ」が行われている。主要な要求は「スンニ派狩り」不法な暴力を止めろということ。
私は2013年からファルージャ、ラマディに滞在し、「金曜デモ」を知った。
2013.1 バクダットから政府軍が派遣され、デモを鎮圧した。死者7名。2013.4 20数名が殺された、しかしその翌週も「丸腰」のデモが敢行された。
イラク新政府は「反テロ法」を制定し、逮捕状がなくても治安機関が恣意的に市民を拘束できるようにした。裁判なしの処刑も行われている。選挙では、政府に反対する立候補者の暗殺は日常茶飯事である。

2013.12.28 金曜デモについに空爆による弾圧が行われた。これをきっかけに「丸腰」のデモ隊は武器をとり、政府との武力衝突が拡大した。反政府軍の中心は部族長などであった。
政府軍と反政府軍の衝突が県境で激化している最中にファルージャは空っぽになった。そこへISが侵入し「黒い旗」を掲げた。事実経過抜きにこの事実のみが世界に報道された。
2014.1〜2 ファルージャ、ラマディで40万人が避難民になった。

政府軍と反政府軍の対立の構図のうちに、国際社会が調停にはいれば、和平が可能だったのかもしれない。しかしISが介入し、政府軍を憎悪する住民の心を掌握して、支配を確立していった。
現地の私の友人は「米軍も、イラク政府軍も、ISもみんな私たちを守るといってやってきて、逆に私たちを殺す。どうしたらいいんだ!?」と言っている。

そしてオバマ政権によるISへの空爆がはじまった。私(高遠さん)はアメリカ軍の、有志連合の空爆・武力介入に反対です。許せないと思う。しかし現地では「もうアメリカの空爆に頼るしかないんだ」という悲痛な声も聴かれる。こんなひどい状態になるまで和平のための調停をしなかった、国際社会の無関心に怒りを感じる。日本は情報鎖国。現実をしらされてない。だから私は話している。

国会で安倍首相が安保法制審議の中で、イラクに大量破壊兵器がなかったことを指摘されて「でもフセイン政権は国連の査察に協力しなかったじゃないですか」などの大嘘を平気で言い、それがそのまま流れている。我慢ができない。賛同議員と市民で検証委員会を立ち上げた。ぜひ協力していただきたい。

・雨宮さんのお話し(要旨)

2006年のメーデーで「プレカリアート」という言葉を知った。新自由主義の下で失業、非正規労働を強いられ生存権を脅かされている若者たち。
20代30代の死因の一位は自殺である。生きづらさは内面化しており、自殺につながっていく。働いて生きるということが本当に大変な時代になった。


            雨宮処凛さん

2015年 公正な税制を求める市民連絡会を宇都宮健児さんなどと立ち上げた。パナマ文書も暴露されたが不公正税制の事態はひどいもの。政府は無視を決め込んでいるが、そんなことが通用しているのは日本だけで、各国で大問題になっている。
奨学金と不公正税制にも関係がある。卒業と同時に数百万の借金をしょい込まされ、就職に失敗すれば即座に貧困に追い込まれていく。

親からの性的虐待の問題もある。ある女性は父親から性的虐待を受け20代で出産もした。父親は障がい者年金を得るため、彼女を知的障がい者として届け出、そのため学校にもまともにいけないまま、もう30歳になった。今は父親から逃げ、新宿で売春をしながらホームレス生活(ネットカフェなど)をしている。

介護離職の問題もある。ある女性は両親の介護をし、見送って母親の葬儀が終わったら手元に1万5千円しかなかった。

こうした現実になかで若者が立ちあがてきているのが展望である。
SEALD'Sは安保法制の運動の中で登場してきたが、今は「学費を下げろ!」「奨学金は給付に!」などのコールもするようになった。
エキタスというグループは、最低賃金1500円運動を始めた。アメリカのオキュパイ運動、時給15ドル運動の影響も受けている。

2008年をピークにフリーター労組の参加者が減ってきていた。しかしこの一年当事者が再び声を上げ始めた。
やはり3.11が大きな契機。10代の多感な時期に社会を変えなければ、という気持ちが芽生えている。
これまでは「自己承認」が若者のテーマだった。でも今は「自己承認」だけではだめだ。社会のために何かしたい、政治を変えたいという若者が増えている。小学生、中学生の時からデモに行っている人もいる。街頭で行動することのハードルが下がった。

「少年サンデー」に経済的徴兵制をテーマにした漫画「あおざくら防衛大学校物語」が連載されている。
戦争は膨大な貧乏人を必要とする。イラク戦争でも民間軍事会社でたくさんの低賃金労働者が危険な仕事をさせられていた。
2008年にネットカフェ難民に自衛隊が勧誘を始めた。しかし今はもっと露骨に勧誘が進められている。
「外堀」が埋められて自衛隊がぐっと近くなった気がする。
貧しい人を大量に必要とする戦争は、世界でもっとも大規模な「貧困ビジネス」である。

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       高遠さんと雨宮さんのコラボトーク
 
まだまだ刺激的なお話がありました。

 高遠さんの安倍晋三の「大嘘」が平気でまかり通っている現実を変えよう。日本は情報鎖国。現実を知り行動しよう、という訴え。雨宮さんの、若者は「自己承認」から自ら社会を変えるために立ち上がり始めている。「戦争は膨大な貧乏人を必要とする貧困ビジネスである」というお話が心に残りました。

SDCCはブースをだして署名とグッズ販売に取り組みました。ご協力いただいたみなさま。ありがとうございます。




         「ミナセン大阪」の仲間と

 辺野古新基地撤回・沖縄ジュゴン保護の取り組みも、戦争と貧困をなくす全世界、全国の運動とつながって、必ず勝ちたいと思いました。

☆じゅごん